改めてマーケティングを意識するようになったのは、とあるマーケティング会社にそそのかされ、時間と資金を無駄にしてしまったから。
安価な似顔絵を描くことから始まり、徐々に企業の漫画を制作し、お客さんの集客や売り上げに貢献してきた実績を重ねてきたつもりの20年。お客さんの役に立っているという実感もあるけど、どうしても漫画の注文は断続的で、常に新規顧客を探している問題。
そう悩んでいた時に、とあるマーケティング会社が言い放った言葉。
「あなたの商品を売ってきます」
私たちは、上場企業でもあるマーケティング会社の言葉をコロッと信じて契約。しかし、蓋を開けてみたら、契約して1年の間で、売り上げどころか見込み客すらなし。
結果的に1年間という時間とコツコツと貯めてきた7桁の(私たちにとってはとても大きい!)資金があっと言う間に溶けていく経験してしまう。失ったのは、費用と時間だけじゃなく、損失に精神的な苦痛から気力すらも失われる。
でも気づいたことがある。自分たちはクライアントに同じような体験をさせてしまっていないかという恐れ。つまりこれは、自戒を込めた備忘録。
「人々が買うのは最高の商品ではなく、一番わかりやすい商品だ」
改めてマーケティングの勉強を始めた頃、この本のキャッチコピーに衝撃を受ける。
ずっと、良い漫画を作っていたら売れるんだと信じていた。そして良い漫画を作ってきているのになんで売れないんだろうと悩んでいた。その考えが一瞬で崩壊。
「良い商品を売っているのに売れない」という悩みはよく聞くけど、その理由はあまり知られてないかも。
人間の脳はわかりやすさを好み、混乱を嫌う
iPhoneやMacBookでお馴染みのアップル社の創業者、スティーブ・ジョブスさんは、マーケティングを失敗したことで追放され、一時期ピクサーに身を置く。そこで世界的に評価される物語作りを学んだジョブスさんは、アップルに戻って物語を活用することでアップル社のマーケティング方法をがらりと変えた。
追放されるきっかけになってしまったは、雑誌広告9ページに渡って、商品の性能の素晴らしさをマニアックな情報で伝えるというもの。それはあまりにも複雑すぎてお客さんに良さが伝わらず、商品はヒットせず、一方、物語作りを学んだジョブスさんが新たに作ったキャッチコピーは、たった2語。
「Think Different」(固定観念をなくして発想を変える、という意味)
ジョブスさんは、複雑な情報を伝える事をやめ、お客さんが本当に得たいと思っている新たな発想を手助けする商品を登場させる物語を描く。その結果、アップル社はお客さんに支持され、世界的な企業にまで成長。アップルが評価されたのは、すごい技術力を持っている最高の商品だからではなく、どの他社よりもわかりやすくお客さんの希望に応えていたから、という内容。
これが私たちが衝撃を受けた「ストーリーブランド戦略」にあった一文
「人々が買うのは最高の商品ではなく、一番わかりやすい商品だ」の正体。
自分たちが漫画を作る上で意識しているのは「わかりやすい物語を作る」ことだから、マーケティング的にも間違った方向にはいってないはず。
「あなたの商品を売ってきます」
単純明快なこの言葉を信じて契約したし、本当にわかりやすい言葉は人の気持ちを動かす。
言葉の裏付けも取らずに契約したことは大反省。
自分たちで学んでみたら、シンプルだけど言われるまで気づけなかったことでした。マーケティングで重要なのは「お客さんが求めているもの」と「手助けができるもの」それを伝えるわかりやすい「お客さんの物語」。でも、嘘ついて騙しちゃダメ、絶対。
ドナルド・ミラー著「ストーリーブランド戦略」/ダイレクト出版