スタッフ

船平依里|制作方

この仕事(画屋)を続けているのはなぜですか?

結論から言うと、「みんなが知らない物事をわかりやすく面白く伝える」楽しさがあるからです。少し長い文章になりますが、お付き合いください。

【学生時代】

仕事を始めるきっかけは幼少時に遡ります。
よくある話ですが、小さいころから漫画を描くのが好きでした。しかしクラスで4番目くらいでそこまで絵も漫画もうまくありませんでした。大学に入っても漫画は描き続けていましたが、やはり自分より上手い人が周囲にゴロゴロいる状況であり、かなり早い段階から商業プロは諦めていました。当時は個人WEBサイト全盛期(2000年代初頭)、ネット上で個人が作品を発表できるようになってきており、趣味で漫画を描く分には雑誌掲載しなくても色々な人に読んでもらえる環境が生まれていました。

大学の時はいくら授業をとっても学費は同じなので、漫画のネタになりそうな興味ある講義を学部関係なくとっていました。そのため4回生なのに1回生のようなみっちみちな時間割になっていたのを覚えています。生物学や心理学、文化人類学、世界の祭り…
「知らないことを知るのは面白い」。その知識欲が割と今の仕事にも生きていると思います。
雑誌連載作家に必要な唯一無二の個性や才能が自分になくても、漫画の技術を使って何かしら仕事に繋げられないか?社会の役に立てないか?とはずっと考えていました。

就職活動が始まり、色々な会社に『「漫画」で御社の採用業務やマニュアル作りに貢献します!」というアピールの仕方をしては大量のお祈りメールをいただき、頭を抱えました。当たり前のことですが、どの企業も自社の社員には漫画制作ではなく通常業務をしっかりこなして欲しいと思っているに決まっています(その頃はまだ漫画での企業PRは今ほど一般的ではありませんでした)。

【入社】

その後、色々あり正真正銘漫画を作る会社である画屋に入社することになりました。
漫画制作などの打ち合わせなどで色々な業種のクライアントさんの話を聞く度に新しい発見があり、知的好奇心が満たされてワクワクしていました。
社内でもやはり私より仕事(絵やデザインなど)が上手い先輩がおり、特別にこれが得意といったものはなかったのですが、作画が他のスタッフに劣る分他を頑張ることにしました。

そう。画屋のいいところは分業制であること。
「絵ができなければ、仕上げをすればいいじゃない!」
マリー・アントワネットの声に誘われるように私は漫画の設計図である「ネーム」と色付けなどの「仕上げ(彩色)」を担当しました。

なんということでしょう。私の作画力が50だとしたら(入社当時)、先輩から100点の作画があがってくるのです。そしてそれに仕上げを追加することで120点の成果物ができる…もし一人でネームから仕上げまでをやっていたらそのクオリティは出せなかったでしょう。それぞれの得意分野を分業することで違う結果がでるんだ、ということを学びました。
仕上げも面白いのですが、入社三日目くらいから任されていた「ネーム」作業もまた面白い行程でした。シナリオにあるト書きとセリフを実際のコマで割ってページ配分やコマの位置、絵の構成を考えていく作業です。建築でいうと設計図のようなもので、1Fに何があって、階段はここで…ドアや襖の位置や数などを決めるようなものです。ネームは何度も書き直したり再構成するものなので、完成原稿のような丁寧な作画は必要とされず、棒人間に毛が生えたような簡単な作画でよいのがとても気が楽でした。

そんな中ネームにただ一つ要求されるのが「わかりやすさ」です。
クライアントさんが伝えたい情報がきちんと表現されているか?老若男女に誤解を与えずわかりやすい内容になっているか?そもそもクライアントさんにキャラクターが何をしているか伝わる漫画にできているか?など。まるで落書きのような見た目ではあるけれど、出来によって漫画の面白さ、読み手の理解度が大きく変わってくるとても面白い作業です。クライアントさんにネーム送付の確認電話をした時に描いたネームを見てくすりと笑ってくれたこともありました。普段漫画冊子などを手にするエンドユーザーの反応を目にすることはほぼないので、まずはクライアントさんに「これならユーザーに自信を持って出せる」と思ってもらえるそんな仕事をしようと思いました。

異業種交流会にも何度も足を運びたくさんの人と名刺交換したり仕事の話を聞いたりしましたが、本当にたくさんの業種や職業、部署、商品、サービスがあるなぁと驚きました。
まだ知られていない面白い商品やサービス、会社がこの世の中にはたくさんあります。その面白さや便利さ、想いなどを誰にでもわかる形で表現して多くの人に伝えていくことは、とてもワクワクするし希望があるなと思います。
それがこの仕事を続けている理由なのかもしれません。

こだわっていることや、これまでに印象的だった
クライアントや仕事はありますか?

難しい内容を面白く「見える化」することを意識しています。
小学生にもわかるくらいの例えで、専門的な内容をわかりやすく表現する。そんなネームを作るようにしています。私は物理が苦手なのですが、「漫画でわかる物理」という本を手に学習の助けにしようと試みたことがあります。ところが肝心の説明部分が漫画ではなくセリフ(文章)だけで展開されており絶望いたしました。結論としては漫画で物理は一切わからなかったわけですが、これは漫画のせいではありません。

おそらく漫画の元となったシナリオや企画は漫画家ではなく企画した出版社の方や監修の先生の手によって作られています。説明する内容を完全に理解した上でそれをわかりやすいように図解したり身近なたとえ話で再現したりということは、企画やネームの段階から漫画家が参加していないと実行することは難しいのです。漫画の一番の特徴はキャラクターが吹き出しでセリフを話すだけではなく、「イメージの具現化」をいかに紙面に表現するかにあります。

この「漫画でわからない」現象を何度も経験し、ではどうやったらわかりやすい漫画にできるのか?を意識するようになった気がします。クライアントさんの話を聞き、不明な点は質問したり自分なりに情報を咀嚼してイメージを書き出す。そして楽しく「わかる!」漫画を提供していけるように日々考えています。物理を理解できず赤点をとっていた昔の自分に「これなら理解できるよ!」と手渡してあげられるような仕事をしていきたいですね。

山本からの紹介

現在子育てをされてて忙しい中、常に最新の情報を取り入れていてビックリします。
そしてその豊富な知識量と技術力を持って、お客様のためになる漫画をより良いクオリティーのものにするための的確な指示やアドバイスをいただけて、その熱意とこだわりにいつも感化されています。企画からシナリオ、そして仕上げのクオリティーは船平さんの手にかかれば間違いがないと絶大な信頼を置いています。

小川からの紹介

船平さんとの出会いは、少しずつ仕事が増えスタッフを増やさないと回らない状況が見えてきた頃に、古巣の大学サークルを訪ねたのがきっかけです。在学中に仕事をすることはなかったのですが、卒業後に訪ねてきてくれました。少しずつ仕事が増えていたとはいえ、収入的にはあいかわらず厳しい状況で、そんな時にバリバリ仕事に取り組んでくれたことで今の画屋があると言っても過言ではありません。

読書家でとても研究熱心で、企画やシナリオを作るときに、しっかりと資料を調べてくれたり、特に仕上げの能力は制作スタッフの中で一番優れてます。加えて努力家でもあり、入社当時は作画に不安なところがあったのですが、毎日コツコツと作画の練習をしていました。クライアントに提出するキャラクターデザイン案は制作スタッフが1案ずつアイデアを出すのですが、彼女の案が初めて採用された時はとても嬉しかったのを覚えています。おそらく4コマ漫画も含めネームを描いた量は制作スタッフの中で当時一番多い多かったと思います。その甲斐あって、構成力もかなり高いと思います。

大学在学中、速記部にも在籍していたことがあるので、ヒアリングのメモを速記でしていたのをクライアントさんに見つかり感心されていました。周りの経営者からは「画屋には奇跡の人材」と言われ、もう2度と彼女のような人材は採用できないだろうから大切にしなさいとアドバイスをもらったような人です。今やおじさんになってしまった創業組の跡を継いでもらえたらなぁと考えています。

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